映画『アフター・ザ・クエイク』最新NEWS

2025.10.14

レポート

【イベントレポート】井上剛監督、大江崇允さん(脚本)登壇!トークイベント・Q&A

本作の公開を記念して、井上剛監督、大江崇允さん(脚本)が登壇するトークイベント・Q&Aをシネスイッチ銀座にて実施いたしました。
上映後、アットホームな場内では村上春樹原作の映像化にともなう苦労話や、豪華キャスト陣の驚きのキャスティングエピソードなど、ここでしか聞けない制作者視点の裏話が展開されました!

「かえるくん、東京を救う」では
終われなかった物語のその先へ――
超豪華キャストのキャスティング秘話を語る!

二人揃って、撮影時に制作された本作のスタッフTシャツを着て登壇した井上監督と大江さん。
その様子を客観視した監督は「芸人さんみたいですね」と言って、登場早々に会場に笑いを誘った。
まず、25年前の原作を今改めて映像化しようとなったきっかけについて監督は、
「前作『その街のこども』(11)で参考にしていたのがまさに『神の子どもたちはみな踊る』。阪神・淡路大震災から30年後の2025年、何か自分にできることはないか?と思っていたところ、プロデューサーの山本晃久さんから「この原作ご存知ですか?」とタイミングよく提案を受けた」と、偶然から企画が始まったのだと語った。
1~3章は原作の物語に忠実であるものの、佐藤浩市さんが主演を務める4章だけは「続・かえるくん東京を救う」というタイトルがつけられている通り、原作のその後の世界が描かれている。
続編といえる物語をどのように組み立てていったのかについて、大江さんは「まず、”まだ何が起きるか分からない”2025年を最後にしたいという想いがあった」と述懐。
「原作では『かえるくん、東京を救う』で完結させず、その後単行本化で『蜂蜜パイ』をあえて描き下ろしている。つまり『かえるくん、東京を救う』ではこの物語を終えられなかったというところから、未来へ希望を持つ”願望に近い”結末を迎える『蜂蜜パイ』と、『かえるくん、東京を救う』を合体させたいと思った」と「続・かえるくん東京を救う」誕生の裏エピソードを披露。

イベントの後半は客席からの質問を募るQ&Aタイムに。
キャスティングに関する質問が飛ぶと、本作では錦戸亮さんが演じるオリジナルキャラクター・クシロの話題に。
「クシロは大江さんの発明。すごく面白いキャラクターだと思った」と監督が明かすと「シュッとした顔をしているけど、ニヒルな雰囲気も出せる錦戸さんにお願いした」と経緯を説明。

本作で一番最初に決まったキャストは2章に登場する三宅を演じる堤真一さん。
関西に由縁のある方をキャスティングしたいという想いがあり、鳴海唯さん、黒崎煌代さんと続々と決まっていったのだという。

3章で善也を演じた渡辺大知さんについては「野球場で踊るという象徴的なシーンを演じられる方を考えた時に、かえるくんのように手足が長い渡辺さんが思い浮かんだ。ミュージシャンとしても活動されているため俳優一本でやっている方とは違うメンタリティをお持ちの方で、ぴったりだと思った」と監督が言及。

4章の片桐は、かえるくんと対峙する重要な役。スタッフから佐藤浩市さんの名前が挙がった時には驚いたという。原作の片桐は風采が上がらない様相を想い受かべるが、「佐藤さんはかえるくんと対峙した時にリアリティのある面白い絵になるだろうと思い、ダメ元でオファーしたところOKいただいた」とまさかのキャスティングエピソードを明かした。

続けて、4つの時代を繋ぐ「赤い廊下」のシーンについて。
大江によるト書きには「ホテルの廊下」としか書かれていなかった部分だが、監督は「地下を走り回る地下鉄と、”みみずくんのお腹の中”のイメージを重ね合わせ、異世界のような雰囲気で撮影した」と明かす。「みんなの悪意を溜め込んでいるお腹の中のようなイメージ。最終的に赤い廊下と、佐藤浩市さん演じる片桐とかえるくんが歩くトンネルが繋がったら面白いと思った」と述懐した。

「生粋の村上春樹ファンも大絶賛!
原作に忠実でありながらも、閉じていない現実社会と向き合う

村上春樹ファンの方からは、「ロケ地や台詞に村上ワールドが散りばめられていて素晴らしい!」と絶賛の感想と共に、小説を映像化する際の苦労点について質問が。
大江さんは「全部大変でしたね」と笑いながらも、「監督やプロデューサー、監督補と本の打ち合わせをする時に、スタッフが当時の新聞記事を持ってきてくれたりして大変参考になった」と当時を振り返った。
4章は最後の最後まで修正を重ねたそうで、特に電話のシーンは時間がかかったのだという。
撮影が全て終わり編集の段階に入ってからも調整は続けられ、かえるくんの声を収録する直前まで大江さんと相談していたことを明かした。

さらに、2章では堤真一さん演じる三宅が焚き火の回数を木棒に記すという描写があるが、これは『辺境・近境』に収められた「神戸まで歩く」にも記述があるイタリアンレストラン「ピノッキオ」のエピソードを引用したもので、監督のアイデアだという。

続いて、「創作者として活動していく上で”自分らしさ”をどんなものだと考えているか」という質問について、監督は大江さんの”らしさ”について「台詞はどうしても村上さんの原作から借りてこないといけないという制約があるなかで、大江さんの脚本はこれ見よがしな点がなくて不思議と素直に読めてしまう」と絶賛。それに対して大江さんは「『個性ってなんだろう』って考えた時に、例えば派手な服装や髪型が個性なのかと問われると、それは美しくないなと思う。『自分らしさは捨ててやろう』と思って残ったものが個性。できるだけ自分で自分を形作らないように気を付けている」と自身の考えを吐露。
監督も自分の作品の中に時折現れる”癖”のようなものはあるのだという。

最後に本作について、大江さんは「今のご時世いろんな映画があるが、『アフター・ザ・クエイク』のような映画は少なくなっている。説明的ではなく、能動的に感じられるようなもので観客とコミュニケーションを取りたいなと思う」と貴重なメッセージを伝えた。
監督は「日本の30年をスケッチのようにして連作で描いたが、みなさんの中にも自分なりの節目による”揺れ”に重ね合わせていただけたら嬉しい」と観客に熱い想いを伝えてイベントは幕を閉じた。

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